この国の領土 16

 久しぶりに思い出したように、この話題に触れてみたいと思う。
 というのは、当時東京大学大学院助教授茅野創氏が取り組んでいた内容について思い出したからである。
 かつ、その後のことがさっぱり分からないからである。
 もし、ご存知の方があれば、何らかの情報を知らせていただければ...と存じます。


 氏のグループは、沖ノ鳥島の領土保全について取り組んでいた。本グループでは、地球温暖化の中で、海水面の上昇が進んで沖ノ鳥島が水没させないための取り組みをしていたのである。つまり、人工構築物によるものでは、国際法的には島とは認められないからである。

 そのプランの主なものは、サンゴや有孔虫によって自然の砂浜を造り出そうというものであった。

 いわゆる、環礁というものは、もともとサンゴ礁の上にサンゴの破片や有孔虫の殻などが打ち上げられて堆積したものである。例の「星の砂」なんかが有孔虫の一種の殻である。
 環礁の上に出来た島はこれらにより成り立っている。台風銀座であるこのような地域では、打ち寄せられた礫や砂により一夜にして砂浜は創出されることも、まま見られることであるという。

 有孔虫は沖ノ鳥島にも生息していて、短期間で繁殖させることが出来るという。グループの提案は、沖ノ鳥島の環礁内は潮の流れが速いため、現時点ではなかなかそれらが堆積する状況にはないため、潮流を考慮して防波堤などでそれらの堆積を促すというものであった。

 その後、この研究がどうなったかさっぱり分からない。頓挫してしまったのか?台風の本場とも言うべきこの地域、それらをうまく利用すれば、20年計画でかなりの成果が挙げられるというものであった。果たしてどうなってしまったのであろうか?


 「沖ノ鳥島再生計画」の中で提案された研究であるが、地球温暖化の進行よりも早く島の高さを高くしておかないと、広大なこの国の領土に関わる問題になることだけは間違いの無いことなのである。

 この国のあり方として、気になることがいくつもあるが、「菊と刀」で指摘されたごとく、我々は本当に熱しやすく冷めやすいのではないか。

 その時の盛り上がりはいいとして、いつの間にか立ち消えになってしまっている話題の如何に多いことか!