〔この国の領土〕13

−ガモフ少将の暗殺−

 平成14年、ロシア国境警備庁太平洋地域局次長ビタリー・ガモフが暗殺された。享年39歳。深夜、彼の住むアパートの部屋に火炎瓶が投げ込まれ、重度の火傷を負い、チャーター機で札幌の病院に運び込まれたが手遅れであった。
 ガモフ少将は、我が海上保安庁との警備協力パートナーであった。ロシアは、水産マフィアによる密漁と密輸で、正規の漁業や輸出が圧迫され、困窮する状態にあった。このような中、ガモフ氏は暗殺される6日前、ロシア領海内で行われた日ロ洋上会談において密漁者に対して厳しく取締りを行うことで合意した直後の出来事であった。
 ロシアの水産マフィアは、日本国内の広域暴力団との繋がりも深く、連携してサハリン・釜山・北海道内を股にかけ、幅広く活動しているという。
 ある日、ロシア船から海賊船に襲われているとのSOS信号を受け、出動した海上保安庁は同船を領海内で保護し稚内港へ入港させた。ところが、取調べを進めた結果、この争いが密漁船同士の抗争で銃撃を受けていたことが判ったという。海上保安庁は、同号の退去を求めたが、今領海外に出ると殺されると、とどまることを懇願したという。その後、ロシア国境警備庁から引渡し要請があり、強制退去処分としてサハリンへと航行していった。
 今回の銃撃事件は、これまでの日ロの北方での雪解けが唱えられている状況の中で起こったことであるが、いずれにしても早い外交関係の構築が必要であるとともに、2島の先行返還を進めていくべきではないだろうか。前回の交渉で覆った返還のため、やはり4島返還を求めながら2島返還との話しに落とし込んでいかなければならないであろうから、1回の外交の頓挫は随分と手間隙を掛けなければ元には戻らないこととなってしまっている。見識なき政治家による政治行動による「ツケ」のいかに大きかったことを感じざるを得ない。4島返還は当然のこと。4島は継続協議として、2島だけ先に返還して何が悪いというのであろうか。全く、田中真紀子の政治行動を今省みると、そのすべてが原理主義的行動といえることが分かる。原理主義は、表面上、あるいは論理の上からは一見正しいとみられるから、彼女の人気もあいまって指示されることとなったが、政治家としては何と未成熟なことか。
本来自分たちの海でありながら、ロシアに対して安全操業と称してお金を払いながら、限られた魚種しか漁が許されない。このような状況を何時まで続けていくのであろうか。ロシアの後進が変更してきたのであれば、今後とも今回のような死傷者が再び出ることも充分ありうる話しである。
 一刻も早い解決が求められるところであるが、次期政権の首班の最有力候補者についても早くも原理主義的なところがプンプンする。基本的考え方は正しいのであるが、その主義主張は政治上正しいと言えるかどうか、真剣に考えて欲しいものである。
 なお、平和条約締結時には、マフィアややくざの対策を本腰を入れて考えていかなければ、とんでもない事になる可能性があることを指摘しておかなければならないであろう。ロシアでは、社会が違う、常識が違う、日本の考え方は通用しない。もともとは北方領域のロシア人なんて牧歌的な存在であったのに...。