江戸あれこれ 12

  す

 江戸の言葉に「す」がつくものが多く見えけられる。
 ひとつには、「すっとんきょう」「すっとこどっこい」など
「す」を付けて強調する言葉である。

 同様に「すっぱぬく」なんていうのもある。
出し抜けに人の弱点や秘密をあばくというような意味であろうが、
元来は「出し抜けに刀を抜くこと」を意味したという。

 これらは、今でも使う言葉ではあるが、
江戸では「すてっぺん」という言葉も使われていた。
これは、す+天辺で、最初とか初っ端を意味する。

 「すけん」は、吉原遊郭で生まれた語である。
遊女を見て歩くだけで、登楼しないことをいうのである。

 因みに「す」を漢字にすると「素」であって、「酢」ではない。
 脱線序でに、発酵させたナレ寿司から酢を使った寿司
への大変革が見られるのも江戸時代のことである。
この大変革の立役者は、
後に御殿医となった江戸の松本善甫であったといわれている。
 必ずしも、一人の人間によって創り出されたわけでもないであろうが、
ともかくも江戸から始まったこの早寿司、
最初は邪道とされたが、全国へと拡がっていった。
 ナレ寿司が注文してから時間がかかるので
何日か後にまた来てくれとの意味から「おじゃれずし」と呼ばれた
のに対して、この早寿司はすぐできるので「待ちゃれずし」とも呼ばれた。

わたくしの好物を生んでくれた“江戸”に感謝!