昆虫の進化

 今、昆虫について、仕事柄いろいろと調べている。
専門とはかけ離れた内容で戸惑いも多い。

 基本的な事項として、従来の分類学的系統学では、
昆虫は多足類(ムカデなど)から進化したと考えられてきた。

 しかし、近年の分子系統解析の結果、昆虫類を含む節足動物門の
系統関係は大きく変貌しているという。

 様々な分子を用いて節足動物門の系統関係を再構築したところ、
多足類は鋏角類(クモなど)に、六脚類は甲殻類(エビなど)に
それぞれ近縁であることが分かってきたというのである。
このことは、六脚類が多足類に由来したのではなく、
甲殻類に起源したものであることを示唆していることになるという。

 つまり、従来は、多足類から進化した昆虫は、頭部・胸部・腹部に分かれ、
胸部にのみ脚がのこり、それ以外の脚は腹部では退化し、
頭部では食べるための脚へと変化したと考えられてきた。
この根本が狂ってくる。

 果たして、どうなるのか?近年の分子系統解析の結果は、
ごく一部の例示をしているだけでトータルでは全く何も見えてこない。
この遺伝的近縁というのは絶対なのであろうか?
現時点では良く判らない。

 しかし、こんな話が出てきて思うのは、
昆虫の分類学的系統に関する根本的疑問である。

 例えば、シミやトビムシのような無変態のものも
昆虫の分類学的要素からすると同一の昆虫ということに
なる(頭部・胸部。腹部に分かれ...)が、
果たして進化の過程で同じ道筋上に乗っかるものなのであろうか?とか、
トンボは古い部類の昆虫と考えられているが、
完全変態する連中が、幼虫の時は多足類の形成を残しているのに対して、
トンボ類はすでに幼虫の段階で胸部に3対の脚を獲得している。

 どちらが進化の先駆者なのであろうか。
ともかくも、これから学説は大きく変化していく
可能性があるであろう。