〔この国の領土〕3

排他的経済水域
 国連海洋法条約の発効により、日本の遠洋漁業の操業水域には大きく制限が加えられることとなった。その反面、世界的な好漁場であるわが国の沿岸域を外国漁船から漁場を乱らされるのを防ぐことができるようになったという利点もある。
 国内法も次第に整備されることとなり、海上保安庁は不法操業の疑いのある外国漁船への立ち入り検査が認められ、密漁や密航、北の工作船などへの取締りが可能となった。この当たり前の行為が、当たり前に行われることによって、この国ではいちいち大騒ぎとなる。
 さて、排他的経済水域に話を戻すが、わが国は、ロシア・中国・台湾・韓国・北朝鮮アメリカ・フィリピンとの間で排他的経済水域を接している。これらの隣国との間の排他的経済水域や大陸棚の境界の画定は、国際司法裁判所の規定する国際法に則り、両国間の合意により行うことと取り決められている。つまり、利害の相反する国同士の間で合意に達することは容易ではないということである。

−大陸棚−
 地学的にいうと、大陸棚とは200mまでの海底をいうが、国連海洋法条約にはそのような定義はなく、「領土の自然の延長」という表現をしている。これが200海里以内なら問題はない。問題は「自然の延長」が200海里を超える場合である。そういう海もたくさんあるわけで、海底の地形によって変わってくるのである。つまり、350海里まで設定するか、水深2500mの線から100海里まで加えて設定するかのどちらかを選択できることになっている。現在、わが国が試算している200海里を超えた大陸棚が認められれば、国土の1.7倍に相当する大陸棚を獲得できることとなる。そのためには、地形が連続していることを立証するデータ(海底地形・地質などの科学的データ)を平成21年までに収集して、「大陸棚の限界に関する委員会」に申請しなければならない。しかし、これには1000億円を超える膨大な資金が必要とされる。そして、そこには10兆円を超えるような海底資源が眠っているといわれている。
 大陸棚には、多くの省庁が関わっていて、なかなかまとまらないというのが現状のようである。そして、各省庁の予算を掻き集めた総額が、平成16年度予算では僅か150億円。予算の使い道が違うのではないだろうか!?
 ところが、この近年東シナ海の日本の排他的経済水域の境界近くで、中国の石油開発会社などが天然ガス田の開発を進めている問題についてはよく知られており、憤慨する人も少なくないであろう。中国に対して憤慨している人は多いだろうが、春暁ガス田群の開発で契約しているのは、中国と米英などの石油開発会社である。しかし、日本も遅ればせながら現場海域の地質調査を始めている。
 ここで問題になるのはそれだけではない。一つは、海底資源探査にようやく着手した海洋調査船に別の海洋調査船を装った中国船が妨害をはじめていることである。日本の調査船に対して拡声器で「探査を中止しろ」と英語で抗議し、音波探査を行う日本の調査船の活動の妨害を続けている。また、この中国船が日本の調査船に異常接近しあわや海難事故に繋がりかねないようなことまでも引き起こしているという。中には、妨害音波を発して日本の探査活動を妨害してきたケースも海上保安庁に報告されている。
 大陸棚調査について政府は、大陸棚の延長を国際的に認知させて海洋権益を確保するため、ようやく本腰をいれて、大陸棚の限界に関する委員会に提出するデータ収集を急いできているが、物理的な妨害のほか外交的に警戒しなければならないのが、国連大陸棚限界委員会における中国人委員の存在だ。日本からは玉木賢策・東大大学院教授(海底地質学)が委員をつとめるが、これに対し、中国は海洋調査船の活動を統括する国家機関で、海軍とも深い関係にあるとみられる国家海洋局第二海洋研究所の呂文正氏が、平成九年から二期連続で委員を務めているのである。中国船は人民解放軍の指揮下にあるとされ、一連の妨害活動は人民解放軍の独走ともいわれているのである。
 果たして、自衛艦の護衛は無理にしても、何故海上保安庁の艦船を我が調査船に同行させないのであろうか?中国の調査船は人民解放軍に所属することも以前からわかっており、この問題に関しては人民解放軍が急進的であることも指摘されてきているのである。

 ともかくも、竹島尖閣諸島の現代的な問題についてはよく知られているので、次回からはもう少し違った観点でみていくこととしよう。    つづく