〔この国の領土〕8

 尖閣諸島は、魚釣島をはじめ、久場島大正島・北小島・南小島・沖ノ北岩・沖ノ南岩・飛瀬の8つの島からなっている。
 周知のとおり、昭和46年、埋蔵量豊富な油田の可能性から、台湾と中国が相次いで尖閣諸島の領有権を主張した。
 
 これまでに起きたもろもろの事件。

・昭和53年4月、日中平和友好条約締結に向けた交渉最中、突然、約100隻の中国漁船が尖閣諸島に接近し、領海侵犯、領海内不法操業を行うという事件が発生した。これに対し、海上保安庁は対策本部を設置し、最大時には巡視船10隻、航空機4機を投入し、これら中国漁船が付近海域から退去するまで、約2ヶ月半の長期にわたり警備を行った。

・平成2年8月、尖閣諸島の領有権を主張するため、「台湾地区スポーツ大会」の聖火リレーを行っていた台湾船2隻が、魚釣島周囲の領海内に侵入した。海上保安庁が巡視船・航空機により退去勧告を行い、領海外へと退去させた。

・平成8年、わが国において国連海洋法条約が発効したことによって排他的経済水域が設定され、漁業活動への影響を不満とし、香港・台湾等で「保釣活動」という抗議行動が活発化した。9月には香港から出港した抗議船が領海内に侵入し活動家数名が海に飛び込み、うち1人が溺死するという事故が発生。10月には台湾・香港の活動家等が乗船する小型船41隻が領海内に侵入するとともに、4人が魚釣島岩礁に上陸した。

・平成9年5月には、30隻の台湾抗議船等が尖閣諸島に接近し、そのうち3隻の抗議船が警告を無視して領海内に侵入。その際、活動家2名が巡視艇に飛び移るという事件を引き起こす。全船とも領海外へ退去させられ、不法上陸を防止。巡視艇に飛び移った2名は台湾抗議船に引き渡されて強制退去させられた。
 さらに、7月にも、1隻の台湾抗議船が尖閣諸島の領海内に侵入し、退去させられている。

・平成10年6月には、香港及び台湾の抗議船等6隻が尖閣諸島領海付近に接近。このうち香港の抗議船「釣魚台号」と同船から降下されたゴムボートが、領海内に侵入。
 その後、領海外に退去させられた「釣魚台号」は、遭難信号を発信し、乗員は付近の台湾抗議船及び巡視船に救助された。「釣魚台号」には人為的原因によると思われる浸水が発生し、しばらく漂流した後、荒天等のため魚釣島付近海域で沈没した。

・平成16年3月には、中国の反日活動グループ7人が、魚釣島に不法上陸し、沖縄県警により出入国管理法違反の現行犯で逮捕。海上保安庁の巡視船で那覇に連行され、翌々日には中国に強制送還された。当初、県警は地検に送検すると伝えられたが、外交的配慮により急遽変更されたらしい。しかし、尖閣諸島がわが国の領土であることをきちんと示すためには、国内で起きた事件は国内法に照らして厳しく取り締まるのが当然だと思われるがいかがであろうか。


 平成14年9月、台湾の前総統で現在台湾総合研究院名誉会長を務めている李登輝氏は、沖縄タイムス記者とのインタビューの中で、尖閣諸島について「台湾にも中国にも属さない(不屬於台灣,也不屬於中國)」であると発言、台湾では連日大きく報道された。彼は同諸島について「日本の領土(釣魚台是日本的領土)」と明言し、与那国島上空に設定されている台湾の防空識別圏については、「総統就任時、軍に十分注意するよう指示した(擔任總統時就指示軍方要特別注意,不要侵犯日本領空)」と当時の政策を語った。この李前総統の一連の発言で、日本の主権がますます明確になったと言えよう。李登輝前総統の発言は、民族感情に流されない公平な発言と言える。中国が主張する「尖閣諸島は台湾の一部」とする主張も根拠を失することとなるのである。ただ、李登輝前総統は、尖閣諸島与那国島近海で漁をしていた台湾漁民を締め出していることに抗議しており、その点配慮が必要と思われる。

 現在の尖閣諸島は、大正島のみ政府の所有で、他の島々は埼玉県在住の民間人が所有し、魚釣島・北小島・南小島は総務省が借り上げ、久場島防衛施設庁が借り上げている。

 魚釣島は、以前には鰹節工場があり、アホウドリの剥製工場もあり、充分に人が暮らしていたのである。現在、尖閣諸島は立ち入り禁止とされているが、一刻も早く島の利用をはじめるべきであろう。無人島のままにしていると不法占拠もされかねないのである。