〔この国の領土〕11

北方領土

 北方領土問題がどのようなものかとの説明は今さら必要もないであろう。
それらの説明は割愛して、今北方領土について思うところを述べておきたい。
 平成16年9月、小泉純一郎内閣総理大臣根室を訪れ、北方領土の視察を行った。現職総理としては3人目の視察であり、海上保安庁の巡視船「えりも」に乗船して、花咲港より出港し、国境の海域を巡検した。
 このことは、元島民や返還運動に携わる人々等を大いに勇気付けたことであろう。しかし、小泉の北方領土に関わる活動は、これを最期に何らの進展もない。
 従来通りの「北方領土の解決なくして日露平和条約の締結はない」との主張を繰り返すばかりであって、小泉色が見えて来なかったし、案の定店ざらしにしてしまった。
 果たして、従来の主張を繰り返すばかりで良いのだろうか?
北方領土もこの60余年の間にもう既に昔の北方領土ではなくなっているのである。
時代にあった北方領土対策が必要なのではないだろうか。
 ロシアはすでに市場経済を導入し、択捉島には「ギドロストロイ」との地場産業が起業し、漁業船団を所有し、水産工場を稼動し、また建設業や銀行等も営んでいるという。
 色丹島には、「オストロブノイ」という大規模缶詰工場をもつ国営企業が立地し、一時は2万人もの従業員がいたというが、市場経済に順応できずに倒産。国後島でも水産加工場があったが倒産しているという。
 択捉のみは非常に栄えているが、色丹・国後では電気の供給も滞りがちであり、離島する者が後を絶たないと言う。(歯舞諸島無人島)
 このような4島の現在の状況を考えなければ、北方領土の問題は解決できないのではないだろうか。単純に4島一括返還等を主張しても、実行支配されて60年、事情は昔とは違うのである。
 4島一括返還は心情的には是非主張したいのではあるが、なかなかそうも言っていられないのではないか。平成16年11月プーチン大統領は昭和31年の日ソ共同宣言を念頭に置き「批准された文書の責務を果たす用意がある」とした。すなわち平和条約締結後には歯舞諸島および色丹島は返還するとしている。
 これを布石として、一時2島先行論が水面下でだいぶ進行していたようであるが、田中真紀子外務大臣とその影響も手伝っての外務省の内紛もあり、ぽしゃってしまった。田中は父角栄の持論を祖述しただけであり、どこまで本当に考えていたのであろうか。このようなことでは、進もうとしたらスカートを踏みつけられても仕方が無いといわざるを得ない。
 前述の4島の現実の状況を考えれば、一括返還等は夢のまた夢。早急に2島の返還を果たし、他の2島は継続協議とすることによって、歯舞・色丹とそれらにまつわる権益を回復し、確固たるものにすることが現実的な対応と言えるのではないか。領海も、水産資源・海底資源も…、どれだけ放棄していたら気が済むのであろうか。2島の返還を果たせば、すぐにでも残りの2島との往来は始まるであろうし、未来への展望も見えてくると言うものであろう。
 ともかくも、4島一括を叫んでいたのでは、何一つ変わらないまま、また何十年という月日ばかりが流れていくこととなろう。
 
 ところで、うちのアルバイトさんで、この夏、サハリンへ行って来た娘がいる。机上でぐだぐだ言っているより、即行動のようで羨ましいばかりである。