江戸のあれこれ 10

べらんめえ

 江戸弁で、すぐに頭に浮かぶ一つに「べらんめえ」がある。
最近は、下町でもこの言葉はめっきりと聞かなくなったが、
昔は何かというと口癖のように「べらんめえ」を
連発する人たちがいた。
 もともとは、「べらぼうめ」であり、これが転訛したといわれている。
寛文の頃(1661〜72)、大坂は道頓堀の見世物小屋で、
全身まっくろで、頭がとがり、目は赤く丸く、
あごは猿のような姿の人物が、
愚鈍なしぐさで人々の笑いをとって、人気者となっていた。
この人物が便乱坊とか可坊とか書いて
「べらぼう」と呼ばれる人物であった。
そこから、「ばか」とか「たわけ」とかいう意味として
盛んに使われるようになったという。

 井原西鶴の日本永代蔵にも「形のをかしげなるをべらぼうと名づけ」とみえている。

 その後、何故か大阪では廃れたが、
江戸でも盛んに使われるようになり、進化した。
「べらんぼう」→「べらんぼうめ」→「べらんめえ」。
主に下町の気風の良さを売り物とする職人たちが使った
巻き舌で荒っぽい物言いを総称して「べらんめえ調」というようになった。

 式亭三馬浮世床にも「夕(ゆんべ)は箆棒(べらぼう)に酔ったぜ」
などという、少し違った使い方もあったようだ。

 いずれにしろ、威勢の良さを競ったのである。


 ボローニャ相変わらず好調です。なお、ボローニャでもちょっとライトアップしています。