大きな政府 ちいさな政府 7

サッチャーの改革 1
経済政策
 サッチャーの経済政策は、マクロ的には安定化政策、ミクロ的には規制緩和・撤廃・補助金打ち切り、関税の撤廃・国有企業の民営化などの構造改革、そして所得の再分配政策からなる。
 マクロ経済政策では、マネーサプライのコントロールによりインフレ率の引き下げを行おうとしたが安定化には成功しなかったが、金融政策の引き締めによりインフレ率は大きく下がることとなった。しかしながら、インフレ率の低下は失業率の上昇を伴ったのであったが、政権後期には失業率も着実に低下していった。

強すぎる労組
 英国の強すぎる労組は、市場の持つ自由度、勤勉さ、革新的な機能というものを完全に阻害していた。サッチャー政権は、この強すぎる労組との戦いに勝利しなければならなかった。労組の弱体化は市場の正常な機能を取り戻すというミクロ経済政策に位置づけられるものであった。
 サッチャーの労組弱体化策に対しては、彼のヒース政権をUターンさせた全国炭鉱労組委員長アーサー・スカーギルが政治ストで立ちはだかった。世界中がエネルギー源を石炭から石油に転換していく中、英国では強大な勢力を持つ炭鉱労組がため、採算の取れない国有企業炭鉱が閉鎖されることもなく、過剰生産と赤字を垂れ流してきていたのである。
 サッチャーは、この来るべき政治ストに対抗するため、用意周到に81年頃から備えていたという。つまり、長期に及ぶであろう政治ストに対抗できるか否かは火力発電所にどれだけの石炭を備蓄できるか、いかに電力供給を途切れさせずに踏ん張れるかにかかっており、ストの予想された84年春には石炭備蓄量5000万トンに達していたという。

 ストは翌年の冬まで続いたが、85年3月スカーギルはついにストを断念した。