江戸あれこれ 7

  高ぐくり

 漢字では、高括りと書く。江戸の商人たちは、この高ぐくりに余念が無かった。
高ぐくりとは、儲けを見込んだ胸算用のことで、
西鶴の『世間胸算用』には「人皆年中の高ぐくりばかりして」とみえている。
「高」とは収穫や収入の額、生産高のことをいう。

 商人たちは、いかほどの儲けになるのか、ついつい高ぐくりをする。
高ぐくりとは胸算用のことで、大まかな勘定のことをいう。
商人は、この高ぐくりをしながら、商売に性を出すのである。
もっとも、経験豊富な商人にかかれば、どのような取引でどれ位の儲けになるか、
おおよその見当がつく。ここから「高をくくる」という語が出てくる。
つまり、「そんな程度のものだろうと決めてかかる」
「物ごとを甘くみる」舐めてかかることをいう。

 しかし、食料の収穫量にしても、取引の具合にしても、
必ずしもうまく計算通りにいくとは限らない。
だから、この言葉が否定的に使われるようになる。
 似たような言葉に「高が知れる」という語もある。
おおよそのことが分かるという意味から転じて、
「たいしたことはないのだ」という語になり、
次第に相手に対して、たいしたことはないと「見くびる」「侮る」語
へと転化して行った。

 いずれにしても、江戸の人間とて、一生懸命に働いた方が良い
と考えていたわけで、高ぐくりなどせぬに越したことはないのである。